探偵の調査をして  
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   またもやピンチ
 

ぼくは急いで車に戻る。
対象者はまたもや自動販売機でカップのコーヒーを買い、椅子に座って飲んでいた。
電話をしながら。離婚届をもらってすぐ、よくそんな顔で電話ができるものだ、と、ぼくは呆れる。

ぼくも車に戻り、ここまでの経緯を代表に報告。
今度は、代表もイライラなく、満足げに聞いていた。
これからそっちに向かう、とのこと。時間は11時45分。
ってか、あんた、歯医者に行ってたんじゃないのかよ。
たぶん、ぼくがいるから、と、わざとこっちに来なかったんじゃないか?と疑いたくもなってしまう。

車に戻って10分。
ようやく対象者が戻ってきた。
ぼくは小腹が減って、おにぎりを開けたところだったので、ちょっと焦ってしまった。
印鑑をもらった駐車カードのおかげで、スムーズに対象者を追う。
また会社に戻る道へと進む。
たった3時間ほどの時間なのに、ぼくは丸一日尾行していたような気持ちになるくらい疲れていた。

対象者が向かったのは、会社ではなく、高速道路だった。
そこで、3つ目のアンラッキーが。
ぼくの車、ETCをまだつけていなかったのだ。
対象者はスピードを少し緩めただけで、高速の入り口ゲートを通過してしまった。
一度停止して発券を待つぼくとの距離があっという間に離れてしまった。
発券されてすぐに、車をすすめるが、カーブの先にあった分かれ道をどっちへ行ったか確認できなかった。
しかし、止まるわけにもいかず、ぼくは勘で右を選んだ。
これって、県外へ行く方向だよなーと、ぼんやりと標識を見ながら。

イヤホンをつけたままだったので、代表に電話。
見逃しました、と伝えると、はぁ???と、あきれたような声で帰ってきた。
“なんで?”ぼくが、ETCをつけていないことを告げると、心底呆れたように、当たり前のことをしんかったんや、と、言われてしまった。
当たり前のことなら、なんで最初に言ってくれなかったんだよ、と言う文句を、また結局言えない、情けないぼくだ。

何も言い返せない自分にイライラし、自然とアクセルを踏む足にも力が入る。
ここで捕まったら、ぼくってさらに情けない男になるよな、なんて考えてひたすら車を走らせる。
当然、当てなんてない。どこでふんぎりをつけて高速を降りればいいんだろう?

こうなってしまったら、あの代表のこと。高速代すら出ないかもしれないな、なんて失礼なことまで考えてしまう。




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