どしょっぱなの調査で成功したぼくは、代表から認められた。・・・ものだと思っていた。
ある日代表から頼まれる。“名古屋に行ってくれるか?”
なんでも、探偵学校に行っていたころの仲間から頼まれたのだとか。
最初の調査で結果をだしたぼくであれば、自分の変わりに行っても恥ずかしくないから、と。
そんなに代表から認められているのだ、とうれしくなったぼくは、快い返事をした。
名古屋での調査手伝いは、調査としてはそれほど大変なものでなく、ほんとうに難しくはないものだけれど、その分、たいくつで時間をもてあます。
けっこう一人で独立してやっている人も多く、ちょっと長い調査になると一人で張り込むのは難しいのだとか。
そりゃ、トイレにも行きたいだろうし、夜中に仮眠もとりたくなる。
そんなときの交代要員として呼ばれるので、当然、相手に動きがないであろう時間帯にぼくがいくことになる。
いくらそう推測しても、動きが無いという保証がないわけでもないので、集中しておかなければならないことに変わりがないので。面白味がなく、余計に疲れてしまうのだ。
あとは、夜中に充電の切れそうな発信器の取り換えや、聞きこみなんかもお願いされたり。
万が一、聞きこみ途中にばれそうになっても、名古屋に住んでいないぼくであれば、不審に思われてもそれほど支障がないからだとか。
なんか、勝手だよな。
と、思いつつも、給料と楽しくなってきた探偵という仕事のため。
ぼくは真面目に仕事をこなした。
それにより、代表の評価も上がってきたようだ。
それについてはぼくもうれしいところ。
ただ、どうしても納得できないところがある。
サラリーマンであれば、当然、出張手当というものがつく。
しかも、夜中に動くこともたびたび。
本来であれば、宿泊手当や残業手当なんかもつき、美味しい話しとなるところなのに・・・。
交通費は実費分きっちりだし、調査開始が夕方で、午前中のうちに終了してしまう調査であれば、2日分のお給料が出るだけ。
確かに、大阪から名古屋だと車で3時間もかからずに行けてしまうのだけれど、疲れからしたら、単純に2日分という疲れ方ではない。
渋滞を考え、遅れることだけは出来ないので、何時間か早目に着くように行く。
しかも、動くのは夜中になるので、到着してから待ち合わせ時間までの空き時間に仮眠をとるため、ネットカフェに入ったりするから、けっこう出費も多いのだ。
それについては、自分なら車の中で仮眠する、とばっさり切られてしまったんだ。
だったら自分で名古屋に行けよ!と言いたくなる気持ちをなんとか押さえたのだった。
まあ、でも世の中には、夜勤があったり、3交代で働いている人もいるだろう。
夜勤をこなす人は、日中の勤務の後、休みがあって休み明けから夜勤になるらしい。
そして、1週間か2週間の交代でまた、日勤となる。夜勤明けは、相当体が辛いであろう…。
明るくなってきてから、眠りにつくという、生命の自然な生活リズムが反対になる生活なのだから。
休みの間に体内時計を整えなければならない。
不眠症にならないのだろうか…。
探偵の仕事も、普通の会社員のように、定時があるわけではないので、プライベートの予定がかなり立て辛い…。
職業上仕方のない事だとは思って入るのだが、やはり切なくなることもあるのが、本音だ。
しかし、依頼主の依頼に応える為に、出来るだけの努力はしていきたい。
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